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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)753号 判決 1978年9月25日

控訴人(原審被申立人、債権者) 株式会社ニューゴルフ・メンバーズ

右代表者代表取締役 松岡正雄

右訴訟代理人弁護士 小谷野三郎

同 中村巖

同 藍谷邦雄

同 西尾孝幸

被控訴人(原審申立人、債務者) 新日本観光株式会社

右代表者代表取締役 佐々木史郎

右訴訟代理人弁護士 満尾叶

同 金田充男

主文

原判決を取消す。

被控訴人の本件仮処分取消の申立を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

第一、申立

(控訴人) 主文同旨。

(被控訴人) 控訴棄却。

第二、本件仮処分取消申立の理由(被控訴人)

原判決添付の別紙記載のとおりであるから、これを引用する。

第三、答弁(控訴人)

右引用の原判決添付別紙記載の一、二の事実を認め、三の主張を争う。

第四、反対主張(控訴人)

一、本件仮処分命令後、被控訴人は、平穏裡に右仮処分命令の趣旨のとおりのプレイをさせて来て、昭和五二年初めまで四年余が経過した。その間控訴人と被控訴人との間に本件仮処分の本案訴訟である東京地方裁判所昭和四八年(ワ)第一八五五号ゴルフ会員地位確認請求事件が存し、右訴訟では控訴人が取手国際ゴルフ場の特別法人会員の地位を有するかどうかが一応争われた。

しかしながら、右ゴルフ場においては、控訴人をいわゆる特別法人会員として処遇し、控訴人において大いにプレイをしてもらいたい旨うながすとともに、仮処分申請時と事情が違ったような態度を示すに至った。

二、そこで控訴人としては当事者間の関係がかくも友好的になった以上もはや訴訟も仮処分も必要ないと考えるに至り、昭和五一年六月九日の口頭弁論期日において前記本案訴訟事件が休止になるや、そのまま期日指定の申立をなさず右事件を取下げとみなされることによって終了させた。

のみならず被控訴人が昭和五二年一月になって本件事情変更による仮処分取消申立事件(原審同年(モ)第四九六号)を提起しその口頭弁論期日(同年三月一日)が定められても、右期日にあえて出頭しなかった。

三、そのため同年三月一五日右取消申立事件につき控訴人は敗訴の判決をうけた。しかるところ、被控訴人は従来の平和的関係をにわかに一擲し、右判決の翌日から再び四年何箇月前の前記仮処分以前の態度に復し、控訴人に対して取手国際ゴルフ場においてプレイさせないという態度に出た。控訴人としてはかゝる結果が生じたことに驚き、やむをえず新たに本件仮処分の本案となるべき訴を東京地方裁判所に堤起するとともに(同庁昭和五二年(ワ)第二六二八号)、取消申立事件について本件控訴を提起した。

四、以上に述べてきたことからも明らかなように、控訴人としては仮処分を将来に存続させる意思を放棄したものではない。

本案訴訟事件が取下げとみなされるにいたったのも、本件原審で出頭しなかったのも、被控訴人において事実上の和解が成立したかの如き態度があり、そのため控訴人において本件仮処分の内容が将来にわたって実現されると信じたからに他ならないのであって、たしかにその点において控訴人に誤解があったわけであるが、それは被控訴人側の控訴人らに対する友好的態度により招来されたものである。結局当時の被控訴人の友好的態度は真意は事実上の和解を成立させるというものではなく、従って保全の必要性に何ら影響を与えるものではないことが明らかとなったわけである。

以上の経過からしても、決して控訴人において保全意思を放棄したことはないと言えるし、又事情変更による仮処分取消が衡平の理念に基づくものであることからしても、本件仮処分を取消す事由は存しない。

五、いずれにせよ、控訴人は、従来の友好的態度を一擲し、控訴人と被控訴人との間において一旦取下げとなった本案訴訟が再び提起され、現在両者間で控訴人がゴルフ会員たる権利を有するかが争われている。従って事情変更の事由の存否の基準となる事実審の口頭弁論終結時以前である現時点において保全の必要性のあることは言うまでもないのであるから仮処分発令時の事情が変更したとして仮処分を取消すべき理由は全くない。

第五、反対主張に対する反論(被控訴人)

一、被控訴人が控訴人に対し、本件仮処分命令後平日特別法人会員としてプレイをさせてきたのは、被控訴人が満足的仮処分命令に服した反射的効果によるものである。仮処分命令の存在する以上被控訴人がそれを尊重すべきことは法治国家である以上当然のことであり、平日特別法人会員の地位の存否は本案において明らかにしようとしたからであって、被控訴人が控訴人において大いにプレイをしてもらいたい旨うながしたり、仮処分申請時と事情が違った態度を示した等のことはない。

二、本件仮処分命令は、控訴人にとっては満足的仮処分命令であるため、控訴人の提起した本案の進行について、しばしば控訴人の不出頭が目立ち、和解期日になるや、ますます不出頭を重ね、控訴人から何らの具体案の提示がないままいたずらに年月を経るばかりとなり、被控訴人がやむなく弁論期日指定の申立をしたものである。右申立をしたのに、友好的態度であるとなぜに解し得るか理解しがたい。弁論期日指定後第二回目の口頭弁論期日である昭和五一年六月九日に初めて控訴人不出頭により本案訴訟は休止となったものである。その間何らの連絡もない。仮処分命令に服しているに過ぎない被控訴人に、友好的態度、または和解が成立したかの如き態度が存した等と主張するのは、仮処分命令の濫用である。

三、まして事情変更による仮処分命令取消の申立という被控訴人の非友好的態度の極ともいうべき事態となっていてもその口頭弁論期日に出頭しないことこそ、保全処分を将来に存続する意思を放棄したものとみなすのは公平の概念に合致こそすれ、決して違反する判断ではない。

四、本件仮処分は満足的仮処分であって、控訴人が終局判決において勝訴したのと同一の法的効果を生じるものであり、反面それは、被控訴人に対し敗訴と同一の苦痛と不利益を与えるものである。

本案訴訟が控訴人の度重なる不出頭により休止となり、休止期間満了によって終了し、その上、事情変更による仮処分命令取消申立事件の口頭弁論期日に出頭もせず、何らの答弁をなさない事実自体、保全意思の放棄以外の何ものでもないとして本件仮処分が取消されたものである。従って新たに訴を提起したからといって、すでに放棄された保全意思が遡及的に復活するものではない。

理由

原判決添付別紙記載の本件仮処分取消申立の理由一、二の事実は当事者間に争いがない。本案訴訟が休止満了により、訴を取下げたものとみなされたからといって、直ちに、被保全権利の訴訟的解決を欲せず、従って保全意思を放棄したものと認めることはできないところ、控訴人が新たに東京地方裁判所に本件仮処分の本案となるべき訴を提起し、これが同庁昭和五二年(ワ)第二、六二八号として現に係属していることは、被控訴人の明らかに争わないところである。

右の事実によれば、控訴人は一旦本案訴訟を休止満了にしたものの、再度本案の訴を提起して被保全権利の訴訟的解決を求めているのであり、現在、本件仮処分を将来に存続する意思を維持していることが明らかである。

そうだとすれば、本件取消申立の理由とされた休止満了の事実をもって事情の変更があったということはできない。従って被控訴人の本件取消の申立は理由がないことになるから、これを棄却すべきである。

そこで被控訴人の申立を認容した原判決は結局不当であるから、これを取消し、被控訴人の申立を棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡松行雄 裁判官 園田治 木村輝武)

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